前の記事では、「オルカンより良い投資先を探し続けるくらいなら、副業や転職などで入金力を上げた方がいい」という考え方を紹介しました。
では、本当にそうなのでしょうか。今回は具体的な数字を使って、「投資でオルカンを上回る場合」と「オルカン以外は買わず、副業で入金額を増やす場合」を30年間で比較してみます。
比較するのは次の2パターンです。
A:毎月3万円を投資し、オルカンより年率1%高い運用成績を30年間達成する。
B:オルカンだけを買い、副業で毎月3,000円多く稼いで、毎月3万3,000円を30年間投資する。
今回は比較を分かりやすくするため、オルカンの運用利回りを年率7%、Aの運用利回りを年率8%と仮定します。
結論から言うと、30年間本当にオルカンを年率1%上回ることができるのであれば、Aの方が最終資産は大きくなります。しかし私は、それでも一般的な会社員の資産形成なら、オルカンだけを買って副業や本業で入金力を上げるBの方を選びます。
理由は単純で、「30年間オルカンを平均1%上回り続けること」と「毎月3,000円多く稼ぐこと」では、実現難易度がまったく違うからです。
まず30年間の結果を比較してみる
今回の条件をまとめると次のようになります。
| 項目 | A:投資で+1% | B:副業で+3,000円 |
|---|---|---|
| 毎月の投資額 | 30,000円 | 33,000円 |
| 想定利回り | 年8% | 年7% |
| 投資期間 | 30年間 | 30年間 |
| 投資元本 | 1,080万円 | 1,188万円 |
| 投資方針 | オルカンを上回る運用を狙う | オルカンのみ |
Bは副業によって毎月3,000円多く稼ぎ、その全額を追加投資します。30年間では3,000円×12カ月×30年なので、追加元本は108万円です。
一方Aは入金額を増やさず、投資先を工夫することでオルカンより年率1%高いリターンを30年間実現するものとします。
年率を月次換算し、毎月末に一定額を積み立てる前提で計算すると、30年後の資産額は次のようになります。
| 投資方法 | 30年後の資産額 |
|---|---|
| オルカン・月3万円・年7% | 約3,508万円 |
| A:月3万円・年8% | 約4,226万円 |
| B:月3万3,000円・年7% | 約3,859万円 |
AとBの差は約366万円です。
したがって数学だけを見るなら、**「30年間オルカンを1%上回れるなら、副業で月3,000円増やすより強い」**という結論になります。
これは当然でもあります。複利では投資期間が長くなるほど利回り差が大きく効くため、30年間の1%差は非常に大きな意味を持ちます。
しかし、ここで重要なのは「年8%の方が年7%より高い」という当たり前の話ではありません。本当に考えるべきなのは、自分がその+1%を30年間実現できるのかという部分です。
「オルカン+1%」は簡単そうに見えるが、実際はとんでもなく難しい
オルカンが年率7%なら8%を目指せばいい。数字だけを見ると、「たった1%なら何とかなるのでは?」と思うかもしれません。
しかし今回必要なのは、1年間だけオルカンを1%上回ることではありません。30年間の平均リターンでオルカンを1%上回る必要があります。
ある年に個別株が大当たりしてオルカンを20%上回っても、その後に大きく負ければ意味がありません。NASDAQ100が10年間オルカンより強くても、その次の10年間で逆転するかもしれません。S&P500を20年間保有して勝っていても、最後の10年間で米国以外の株式が大きく伸びれば結果は変わります。
つまり、本当に「オルカン+1%を達成した」と言えるのは、2050年代になって30年間を振り返った結果、平均リターンで1%上回っていたと確認できたときです。
しかも、オルカンを上回ろうとすれば、自動的に+1%になるわけではありません。
S&P500を増やした結果、米国株が世界株を下回るかもしれません。NASDAQ100を増やした直後にテクノロジー株が長期低迷する可能性もあります。日本株やインド株を増やして失敗する可能性も当然あります。
現実には、「オルカン7%」と「頑張って8%」の二択ではありません。頑張って6%になる可能性もあれば、5%になる可能性もあります。
今回のAの約4,226万円という数字は、30年間の投資判断が結果的に成功し、オルカンを平均1%上回れた場合の成功例なのです。
そもそもプロでも長期で市場平均に勝つのは難しい
「でも、ちゃんと勉強すれば1%くらい勝てるのでは?」と思うかもしれません。
ここで参考になるのが、S&P Dow Jones Indicesが公表しているSPIVAです。これは、アクティブファンドと市場指数の成績を長期で比較している調査です。
SPIVA Japanの2025年末データを見ると、日本で販売されているグローバル株式アクティブファンドでは、比較対象となるS&P Worldを下回った割合が1年間で86.51%、3年間で90.16%、5年間で97.69%、そして10年間・15年間では100%となっています。米国株式アクティブファンドでも、10年間では97%を超えるファンドがS&P500を下回っています。
もちろん、これは「プロの100%がオルカンに負けた」という意味ではありません。SPIVAで比較されている指数は、オルカンが連動を目指すMSCI ACWIそのものではありませんし、アクティブファンドと個人投資家では条件も違います。
それでも、企業分析や経済分析を仕事として行っているプロですら、広範な市場指数を長期間上回り続けることに苦戦しているという事実は重く見ていいと思います。
プロは決算を読み、財務諸表を分析し、経営者と面談し、金利や為替、競合企業、マクロ経済まで分析しています。それでも長期では市場平均を下回るケースが非常に多い。
そんな世界で、普通の会社員が仕事から帰った後にYouTubeやブログを数時間見て、「これならオルカンより1%くらい勝てるだろう」と考える。
私は、その+1%を30年間の資産形成計画の前提にするのはかなり強気だと思います。
一方、副業月3,000円は自分で改善できる
ではBの「月3,000円多く稼ぐ」はどうでしょうか。
年間では3万6,000円です。もちろん、副業なら誰でも簡単に月3,000円稼げるという話ではありません。最初の数カ月は0円ということもあるでしょう。
しかし、投資リターンとの大きな違いは、自分で改善できる部分が多いことです。
ブログなら記事を増やしたり、SEOを勉強したり、過去記事を改善したりできます。Webライティングなら文章力や営業力を高められます。プログラミングなら技術力を上げられます。
副業でなくても構いません。資格を取得して昇給する、転職して年収を上げる、本業の専門性を高めるという方法でもいいでしょう。
将来のS&P500のリターンや為替を自分で決めることはできません。しかし、自分が月3,000円多く稼ぐために何をするかは、自分で行動できます。
この違いはかなり大きいと思っています。
月3,000円でも、30年間では約351万円の差になる
普通にオルカンへ毎月3万円積み立てた場合、今回の年率7%という仮定では30年後に約3,508万円になります。
一方、月3,000円多く入金して毎月3万3,000円積み立てると、約3,859万円です。
差は約351万円あります。
副業によって実際に追加した元本は108万円です。それが長期間運用されることで、最終的な資産差は約351万円まで広がります。
つまり、副業で稼いだ3,000円は、その瞬間の3,000円で終わりません。若いうちに投資したお金ほど長期間運用されるため、将来さらに大きな金額になる可能性があります。
副業で入金力を上げることと、長期投資の複利は非常に相性がいいのです。
しかも今回のシミュレーションでは、Bの副業収入は30年間ずっと月3,000円のままです。
1年目も3,000円、10年目も3,000円、20年目も3,000円、30年目も3,000円という設定です。
しかし、実際に副業を続けながら改善していけば、月3,000円が5,000円、1万円、3万円と増える可能性があります。もちろんうまくいかず0円になる可能性もありますが、少なくとも30年間ずっと初心者のままでいる必要はありません。
副業では収益だけではなく、スキル、経験、コンテンツ、顧客、実績なども積み上がっていく可能性があります。
月約6,100円入金額を増やせば「オルカン+1%」に追いつく
では、年率7%のオルカンだけで、Aの「毎月3万円・年率8%」と同じ30年後の資産を作るためには、毎月いくら投資すればいいのでしょうか。
計算すると、毎月約3万6,134円です。
つまり現在の月3万円から約6,100円入金力を増やせば、30年間オルカンを1%上回れた場合とほぼ同じ結果になります。
| 方法 | 毎月の投資額 | 想定年率 | 30年後 |
|---|---|---|---|
| 投資で+1%を取る | 30,000円 | 8% | 約4,226万円 |
| 入金力を上げる | 約36,134円 | 7% | 約4,226万円 |
この数字を見ると、私はかなり分かりやすいと思います。
「プロのアクティブファンドですら長期で苦戦している市場平均超えを30年間続け、自分はオルカン+1%を達成する」
のと、
「毎月約6,100円多く投資できるようになる」
のどちらを狙うか。
私は後者を選びます。
月6,100円なら年間約7万3,000円です。副業でもいいですし、転職による年収アップでも構いません。
年収が10万円上がるだけでも額面ベースではこの水準を超えます。転職によって年収が50万円、100万円上がるのであれば、資産形成への影響はさらに大きくなります。
投資研究に使う時間を、自分自身に使った方がいい
仮にオルカンを上回る方法を探すため、毎週1時間投資研究するとします。
年間52時間、30年間では約1,560時間です。
その1,560時間で企業分析、決算、金利、為替、S&P500、NASDAQ100、日本株、インド株などを研究した結果、30年後に「結局オルカンを下回っていました」となる可能性もあります。
プロですら市場平均超えに苦戦しているのですから、十分あり得る話です。
それなら私は、その1,560時間をブログ、プログラミング、資格、転職活動、営業、Web制作、小さな事業などへ使いたいと思います。
最初は月3,000円しか稼げなくても構いません。月5,000円、1万円と増える可能性がありますし、そこで身についた文章力、営業力、ITスキル、マーケティング力などは別の仕事にも使える可能性があります。
さらに、その能力が本業の年収アップや老後の収入源につながるかもしれません。
投資研究で得た知識も無駄ではありません。しかし、資産形成という目的だけを考えるなら、自分自身の単価を上げるためのスキルへ時間を使う方が、より直接的に入金力へつながりやすいと思っています。
資産形成初期ほど「投資力」より「入金力」を重視したい
運用資産が1億円ある人なら、1%の差は年間100万円です。この規模になると、運用効率の差は非常に重要になります。
しかし今回の設定は、毎月3万円から30年間積み立てる人です。
資産形成初期に100万円を運用している人が、何百時間も勉強してオルカンを1%上回れたとしても、差は年間1万円程度です。
一方、本業や副業によって年間10万円、30万円、50万円と入金額を増やせれば、資産形成への影響はかなり大きくなります。
だから私は、資産がまだ小さい時期ほど、投資商品の細かなリターン差よりも投資元本を増やす能力を重視した方がいいと思っています。
もちろん、本当に30年間オルカンを平均1%上回れる人なら、その能力を使う価値があります。今回のシミュレーションでも、年8%を実現したAは副業月3,000円のBより約366万円多くなっています。
+1%には非常に大きな価値があります。
しかし、価値が大きいことと、簡単に実現できることは別問題です。
私は、自分が30年間市場平均を上回り続けられる天才投資家であることを前提に資産形成計画を作るより、世界市場の平均を取れれば十分と考えてオルカンを買い、自分で改善できる入金力の方へ努力したいと思います。
まとめ|プロでも難しい「+1%」より、私は入金力を上げる
今回、毎月3万円を30年間投資する条件で、「オルカンより年率1%高い運用を続ける場合」と「オルカンだけを買い、副業で毎月3,000円入金額を増やす場合」を比較しました。
結果は次の通りです。
| 戦略 | 30年後の資産 |
|---|---|
| オルカン・月3万円 | 約3,508万円 |
| オルカン+1% | 約4,226万円 |
| オルカン+副業月3,000円 | 約3,859万円 |
数学上はオルカン+1%の勝ちで、約366万円多くなります。
しかし、その結果を得るためには、30年間平均でオルカンを1%上回り続けるという非常に難しい条件をクリアする必要があります。
プロのアクティブ運用ですら、長期で市場平均を上回ることに苦戦しています。SPIVA Japanの2025年末データでは、グローバル株式アクティブファンドは10年・15年の期間で100%が比較対象のS&P Worldを下回っています。
もちろんこれは「プロが全員オルカンに負けた」という意味ではありません。しかし、専門家が本業として取り組んでも、広範な株価指数を長期間上回り続けるのは難しいという事実は、十分参考になります。
だから私は、「オルカンより1%高い商品は何だろう?」と探し続けるより、毎月3,000円多く稼ぐ方法を考えます。
そしてできれば3,000円で終わらせず、6,000円、1万円と自分自身の入金力を育てます。
今回の条件なら、月約6,100円追加入金できれば、30年間オルカンを1%上回った場合とほぼ同じ約4,226万円になります。
プロでも難しい市場平均+1%を30年間狙うのか。それとも年間約7万円多く投資できる自分を作るのか。
私は後者を選びます。
投資についてはオルカンで世界市場に任せる。本業、副業、転職、スキルアップなど、自分で改善できる部分に時間を使う。収入が増えたら、そのお金をまたオルカンへ入れる。
資産形成で必要なのは、投資の天才になることではありません。
「+1%の投資先」を探すより、「+3,000円、+6,000円、+1万円稼げる自分」を作る。
30年間という長期で考えるなら、私はその方が現実的で、再現性の高い戦略だと思います。
※本記事では比較を分かりやすくするため、オルカンの運用利回りを年7%、オルカンを上回る運用を年8%と仮定しています。将来の運用成果を予測・保証するものではありません。
※シミュレーションは年率を月次換算し、毎月末に一定額を積み立てるものとして計算しています。実際の投資結果は価格変動、税金、コストなどによって異なります。
※SPIVAで使用される比較指数は、オルカンが連動を目指すMSCI ACWIとは異なります。SPIVAの数値は「何%のプロがオルカンに負けた」という意味ではなく、アクティブ運用が広範な市場指数を長期間上回り続ける難しさを示す参考として掲載しています。
※副業による収入増加を保証するものではありません。副業や転職、スキルアップにも時間、費用、失敗などのリスクがあります。
※本記事は投資および副業に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品や副業を推奨するものではありません。
[参考]
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